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リアル生活激変につき更新停滞中でござる
本エントリは、イベント 『じっくり語り語られてみよう』に参加し,作品について語っています.作品へのネガティブな表記・ネタばれを含む場合がありますが,イベントの趣旨に乗った上での記述とご理解ください.他の方の語り記事一覧 → 『No.16: 伊織と千早と蒼い鳥
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題名:アイドルマスター 伊織と千早と蒼い鳥
作者:tlop
特徴:伊織 千早 ファミソン8bit 公式曲 H.264



 実を言うと、この作品を見た瞬間に記事を書き始めたのだが、完成させられなかった。
 一歩・・・いや、半歩間違えたら二度と立ち直れない傷を負う。そう思わせるほどの圧倒的な緊張感、ライバルという言葉では表現しきれない異様な何かの前に、言葉が追いつかなかった。
 心の整理が付くまで置いておこう、と決めてから数日。「じっくり語られてみよう」にこの作品が出されていた。
 千早が伊織に叩き付けた挑戦状の如く、作者が視聴者に挑戦状を叩き付けてきたかのように思った。いや、マジでえらい事になったと思ったよ管理人は(苦笑)。

一線を越える覚悟の言葉

 SSを読まずに動画だけ見ると、良くも悪くもこの言葉が心に深く突き刺さる
 初見では、この言葉「だけ」に何もかも引きずられると言っていい。その背後に何があるのか、まで考える余裕は無い。
 そして動画単体では、ほぼ一方的に千早が上から目線という印象を受ける。真実はそうでは無いのだが、それを示唆するシーンは冒頭の台詞に比べるとインパクトが弱く、伊織の強がりレベルで印象が止まってしまいかねない。伊織がセンターに立ってからのカットインが速すぎて読めないのも、そういう観点からは惜しい所だ。

 確かにSS抜きの単体でも、この動画のインパクトは非常に強い。
 だが動画単体では、千早のランクが伊織よりもかなり上っぽく見える。これは作者にとっては本意では無いと思う。千早が伊織にセンターを譲るのは、後輩の成長を見守る余裕の証し・・・では無いはずだから。
 やはり、この作品はSSと動画のセットで完成品、と言うかSSの最終章がこの動画
 一方だけを切り離すのは無理だ。

 ではSSを読んでどう印象が変わったかというと・・・。
 
 アレは、千早にとって挑発ではなく希望であったという事だ。

 千早は伊織に、自分をサポートする事を拒んだ。代わりに望んだのは、全力の「蒼い鳥」。
 伊織だから歌える、千早というフィルタを介さない「蒼い鳥」そのもの。それが千早にとっても危険な綱渡りであった事は、SSを読むと理解できる。
「ですが蒼い鳥は絶対に譲れません」
 そう言い放った千早の心中には、油断したら奪われかねないという危機感があったはず。それだけの物が伊織にあると、千早は確かに気付いていた。

 だが・・・いや、だから、か。
 それまで積み上げて来た「普通に成功するプラン」をぶち壊して、本番一発のリスキーすぎるギャンブルを千早は仕掛けた。
 そして、伊織はその挑発を受ける覚悟を決めた。融通の利かない千早にアドリブへの対応を期待するのは酷な事ぐらい、彼女も知らないはずが無いのに。

 それは互いの対抗意識だろうか? 否。そんな低いレベルの話ではない。

一瞬しか見えないのが惜しい

 ほんの一瞬だけ織り込まれたこのシーンが、かなり象徴的だと管理人は思う。
 伊織の持ち歌、Here we go。しかし、そこにもう一つの意味がある。それはHere we goであり、Here I goでは無い
 そう、自分しかいない世界で生きてきたナイチンゲールと、自分を表に出さない世界で生きてきたカナリアが、初めて真正面からパートナーを信じたのである。
 馴れ合いを超えた信頼と、信頼される事への覚悟。抜き身の剣で斬り合うかのような緊張感に満ちたステージの上で、それでもアクセルを踏み続けて二人は舞う。
 そこに遠慮や手加減は無い。ミスをフォローする余裕など残していない。歯車が一つ狂えば、すぐに奈落の底へ転げ落ちる危うさ。普通のプロなら、こんな道は選ばない。
 だが、二人が共にBestと言えるステージを作るにはこれしか無かった。そして二人は衝突と葛藤の果てに、相手も同じ道を選ぶと信じ、最後まで駆け抜けられると信じ、それに全てのチップを賭けたのだ。
 だからこそ、伊織だけでなく千早まで、拳を握りしめたのだ。
 「飛べる」ではなく「飛ぶ」。落ちるかどうかなんて考えていたら、飛べはしない。
 なんて不器用な二人。そして、なんて熱い二人。

 かくして蒼い鳥は、千早メイン・伊織サブでは決して届かない空にまで舞い上がった
 それは多分、伊織ソロ、千早ソロでも届かない世界だろう。

 で、最後に何か台詞が入るとしたら・・・お互い満足げな表情で、こんな憎まれ口を叩き合うのでは無いだろうか。
「まだまだね」「言うじゃない」
 二人にとってこれはゴールではなく、スタートであって欲しいから。
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